DVの加害者は自分は悪くないと思っています。また、被害者も悪いのは自分だと思い込んでいるので、なかなか抜け出せなくなります。
まさに僕の父親がDVでした。
今だから冷静に受け止められますが、DVの加害者もどうして自分がそうなってしまったかに気づいていません。もちろんなりたくてなったわけでもありません。
DVの加害者は、過去に認めてもらえなくて辛い思いをしたり、ひどい裏切りにあったり、それらが原因で偏った思考に陥るケースがあります。
僕の父親の場合は、人からの裏切りが原因ではないかと思っています。
唯一の理解者だった母親に親孝行をするために競輪選手になろうと決め、貧弱な体からわずか半年で恐ろしいほどの肉体改造をし、プロテストを通過しました。
小さい頃から鍛えつづけてきた人でさえ、何年かかってもプロになれないというのに、ひょろひょろの体の凡人がわずか半年でその夢を叶えてしまったわけです。精神的にも肉体的にも相当な負荷をかけたと思います。それだけ母親に対する思いが強かったのだと思います。
プロになってようやくこれからという時に、とっくに母親は癌で死んでいたということを聞かされ、相当ショックだったと思います。
プロになってからも、苦しみや、憎しみをバネにしていたのかもしれません。
階級はどんどんとあがっていきましたが、ある時父親は自殺をはかります。
風呂場で灯油をかぶり、全身やけど。自ら選手生命を絶ちました。
競輪選手で活躍していたころは誰もが近づいてきたのに、身動きが取れなくなったらパタリと人は去って行きました。
父親は裏切られたと思ったことでしょう。
まずます人を信用できない状態になっていったのだと思います。
父親はよく、「らしさ」とか「こうあるべきだ」という言葉を口にしていました。
でもそれは、父親の物差しでした。
DV加害者の傾向ともいえます。
父親はものすごくプライドが高かったです。
これもDV加害者の特徴ですが、馬鹿にされることを恐れます。
周りは馬鹿にしたつもりは全くなくても、本人がそう思い込んだら怒りが爆発します。
僕が小学生だったある日、こんな出来事がありました。
貧乏生活で家に風呂がなかったので近所の銭湯に行くわけですが、湯船から出ると、いきなり父親に顔面を殴られつづけました。
顔中血だらけになり、周りが騒然となりました。あの時は本当に殺されるのではないかと恐怖を覚えました。
番台の女将さんが、悲鳴をあげ、もうやめてください警察を呼びます、といってなんとかおさまりました。
僕は自分が殴られている理由が全くわかりませんでした。
後で知りましたが、どうやら父親は僕が湯船に入っている時に、僕のことを呼んだらしいのです。
銭湯の中には何人も人がいてざわざわしていたので、僕は全く父親の声に気づくことができませんでした。
父親は僕が無視をしたと思ったようです。そして馬鹿にされたと被害妄想を抱いたのでしょう。
普通の人には全く理解できないようなことでも、DV加害者はスイッチが入ってしまいます。
■こういう女性は気をつけましょう
僕の母親もまた、DVに遭いそうな人でした。
自分の考えを持っていてもそれを表現できないのです。
表現できないと何がまずいかというと、上下関係ができあがってしまうということです。
上の者が下の者を支配する関係です。
母親は父親に従うしかありませんでした。
これもまたDVによくあることですが、父親に管理されていました。
外部との接触を完全に断たれるのです。親や兄弟とも合わせてもらえない、友達も作ってはいけない。
普通の人がみたら異常だと思いますが、隔離されているので、何がいいか悪いかが見えなくなってしまうのです。
そのうち母親は父親から暴力を受けても、私が悪いから殴られているんだと思うようになったと思います。
現に、僕もそう思っていました。僕が駄目な人間だから殴られるんだ、とずっとそう思ってきました。
被害者が気づいていないので、もう抜けようがなくなるわけです。
DV被害に遭うのは圧倒的に女性のほうが多いです。
社会構造の問題も大きいと思うのですが、未だに男性が上で女性が下のような考え方をしている人も多いです。
女性の方も、自分の考えをしっかりと表現できるようにしていくことが大切です。
恋愛も結婚も上下関係を作らないことです。
ただ、注意してほしいのは、しっかりと上下関係ができてしまっている場合、途中から女性が意見をいうようになると、もっと攻撃を受けることになってしまいます。
自分がDVに遭っていることに気づいたら、相手と距離をおくことです。
上下関係を作らないのは、付き合い始めから心がけましょう。
■DV加害者になりやすい男性の見極め
付き合ったり、結婚を考える上で参考にしてください。
親がDVの男性は、DV加害者になりやすいです。
誤解があるとまずので、あくまでも傾向と捉えてください。
なぜ親が、DVだと子供もそうなるかというと、「そうあるべきだ」「それが正しい」と思い込んでしまうからです。
小さい頃に植えつけられてしまったものは、なかなか消えることがありません。
付き合い始めのころは優しかったのに、ある時からDV加害者に変貌するということもあります。付き合い始めの頃は気を使っているので、我慢していますが、徐々にそれが蓄積されていってある時爆発してしまうパターンです。
一度爆発させてしまうと、繰り返してしまいます。それが当たり前になっていきます。
付き合っていろいろ話せるようになってきたら、少しずつ、聞き出していくといいと思います。焦らずゆっくりです。
肝心なのは、DVについてその男性がどう捉えているかです。
親がDVだったことから目を背けようとしているのか、親がDVだったことをきちんと受け止めて自分は絶対に同じことをしないという学びに変えているかどうかです。
幸いにも僕は、父親の姿をみて、自分は絶対に同じことをしたくないと思いました。
父親がなぜDV加害者になってしまったのかを探り、きちんと向き合えたことで、自分は同じようにならずに済んだのだと思います。
単にDVは悪いことと流すのではなく、その時の父親の心理はどうだったのかということを詳細に思い浮かべました。
父親も相当辛い思いをしたり我慢もしてきたのだとわかりました。
父親は被害妄想がどんどん膨らんでいって、人のちょっとした言動に反応してしまうようになったのだと思います。
自分の考えをしっかり持つことはいいことですが、自分と意見の違う人を尊重できるかどうかです。
付き合っている相手(女性)には優しいけれど、他の人の失敗を極端に避難したりしていないか、他の人への態度が横柄ではないか、その辺りも参考にするとよいでしょう。
■DVの傾向がある男性との接し方
DV傾向の男性は、自分の中で「正しさ」を持っています。
「こうあるべきだ」という考え方ですね。
その基準は人の数だけありますから、どこに地雷があるかわかりません。
なので、完全に防ぐことはできないですが、なるべく被害を少なくしたいものです。
DV加害者は、例えば自分が暴力を振るってしまうことにも、相手や周りに原因があるから自分はそういう行動をとったのだと正当化します。
周りからはどうみても異常でも、本人にとっての「正しさ」からズレてしまったから爆発してしまったのです。
普通の人は、我慢ができることでも、過剰に反応してしまうものです。
特に、認められないことや、馬鹿にされることを嫌います。
DV傾向にある男性と接する時は、丁寧に接することを心がけましょう。
感謝の気持ちもきちんと言葉で伝えましょう。
そうすることで、認められている、必要とされているという感覚になり、安心感を持ってもらえるようになります。
DV加害者もなりたくなってなったわけでなく、心の闇があります。
信頼関係を築くことで、徐々に気持ちに余裕が持てるようになることもあります。
これは人の感じ方なので、どこまでが大丈夫でどこまでがアウトという線引きは難しいでしょう。
僕の母親は、「この人には、私しかいないんだ」と思って、死んだのだと思います。
父親と母親は一緒に自殺しましたが、何を思ったかは想像はできますが、本当のところは二人にしかわかりません。
何がよくて何が悪いと簡単に決めることはできませんが、思い込みは人生に大きな影響を与えます。